« 2009年2月 | トップページ | 2009年4月 »

2009年3月

ナンパ道

その男はお世辞にもナンパが上手いとはいえなかった。
いつだったか・・・下着が見えそうな程、丈の短いスカートの女子高生がバスストップに立っているのを見かけた時、「こいつならチョロいな」と思い、声をかけたのだ。
だがそのあと何を言っていいのか分らず、モジモジしている間にバスが来て彼女はそれに乗って行ってしまった。

また他にも・・・半尻のジーンズの女が自動販売機でタバコを買っているのを見かけた時、男はムラムラと欲情し、血走った目のまま声をかけたのだ。
だが前回と同様で、何を言っていいのか分らず、モジモジしている間に彼女は怪訝な表情をして帰ってしまった。
「どうもこれはマズい」と彼は今迄のやり方を反省し、「自分に欠けているのは他でもなく、巧みな話術なのだ」と悟ったのである。

一時間後・・・彼はスーパーの書籍コーナーを目指していた。
ナンパの為の話術を身につけようとしたのだ。
書籍コーナーは一番の奥だが、その途中に家具コーナーがあり、そこに豪華で大きな鏡が立てかけてあった。
彼は何の気なしに鏡を覗いてみた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
豪華なその鏡の中・・・どう見ても七十歳をとっくに越えたと思われる老人が、しわくちゃの顔で男の目をじっと見つめていた・・・

| | コメント (0) | トラックバック (0)

別離

安男はとても人のいい性格であった。なぜなら恋人の朱美に長い間騙されていたにも関わらず、それさえも自分への愛情の証だと勘違いする程だったから・・・

そしてそんな二人の様子を見てきた安男の妹である洋子は、ただ女にからかわれてるだけの兄を哀れに思い、朱美とは別れるべきだと説得を続けた。
最初は安男も聞く耳をもたなかったが、洋子の必死の努力が効を奏し、ついに朱美と別れる決心をしたのである。

別れの日・・・未練なのか、朱美は安男に見栄えのいい傘をプレゼントし、去っていった。

安男は憂鬱な面持で空を見上げていたが・・・暫くするとまるで神が彼の心情を察したかのように街に激しい雨を降らせた。
彼は朱美との楽しかった日々を思い出すと居た堪れなくなり、彼女のくれた傘をさし、「あけみ~」と呟きながら彼女の後を追いかけたのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
土砂降りの雨の中・・・傘もささず、びしょ濡れになりながら、まるでこぶしを前に突き出したような格好でトボトボと歩いてる男が一人・・・

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2009年2月 | トップページ | 2009年4月 »